動脈が肥厚し硬化した状態を動脈硬化と言い、これによって引き起こされる様々な病態を動脈硬化症といいます。最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となります。
平成20年から始まった特定健診の目的である肥満、運動不足から起こるメタボリックシンドロームの予防、診断、治療に注目してきました。また、メタボリックシンドロームは糖尿病・脂質異常症・高血圧といった動脈硬化につながる基礎疾患であることから、動脈硬化の早期診断を目的に頚動脈エコーやCAVI(心音と心電図を検査しながら脈の速さを測定する装置)とABI(動脈のつまりをみる装置)を取り入れました。
これらの検査は短時間で、しかも低コストで行えます。さらに、治療結果も簡単にみることができるメリットがあります。高血圧や脂質異常症の方などは、非常に理解しやすいシステムとなっております。
メタボリックシンドロームが進行して起こる脳梗塞、脳内出血、心筋梗塞などの動脈硬化性病変は死因の30%(円グラフ)を占め、命をとりとめても重大な障害を残す場合が多いことが問題です。
老化と共に動脈硬化は進行します。心血管イベント、脳血管イベント発症の要因になります。細かな検査により、これら重大なエベントを未然に防ぎ健康な老後を迎えるために、患者さんの一人一人の血管の老化を知ることができます。
1. ベッドに横になって心電電極・心音マイク・カフをつけます。2. 血圧を計るのと同じ要領で、わずか4分程度で検査終了。3. 結果はすぐに出ます。その場で先生から説明を受けることができます。
この検査でわかることは「動脈の硬さ」と「動脈の詰まり」です。
【CAVI=動脈の硬さの値】CAVIは、動脈の硬さの程度を表します。CAVIを測定することによって、あなたの血管の硬さが何歳相当であるか(血管年齢)分ります。
【ABI=動脈の詰まり】ABIは、足関節上腕血圧比で動脈の詰まりの程度をみます。
この図は60歳男性高血圧症の計測値でABIは正常範囲であるが、CAVI値は高値を示し、血管年齢が実年齢よりも20歳以上も高い状態です。このことから動脈硬化の進行が推測されます。
頚動脈の断層を超音波で検査し、その内膜中膜肥厚(IMT)をみて、早期の動脈硬化を診断したり、頚動脈の狭窄、拡張の程度をみたりするのに使用する装置です。また、甲状腺の腫れ(腫瘍の有無などをみる)の検査もできます。
1. 狭窄・閉塞の有無2. 全身の動脈硬化度の評価3. 治療効果の判定4. 疾患の有無(高安動脈炎・頚動脈解離・動脈瘤)
カラードプラで血流を確認。狭窄・閉塞がないかどうかを調べます。総頚動脈・内頚動脈・椎骨動脈についてパルスドプラで血流速度を計測します。
プラークとは血管内腔に限局性に突出した1.1mm以上の明らかな隆起性病変のことです。脳血流に大きく関わる頸動脈の狭窄の有無や、血流・プラークの有無を見ていきます。これらがあると脳梗塞を起こしやすくなります。また、頸動脈のプラークは柔らかいほど脳に飛びやすく、より脳梗塞を起こしやすいと言われています。頸動脈に狭窄・プラーク・動脈硬化を認める場合には、高血圧・脂質異常・糖尿病があれば必ず十分な治療を行い、その上で抗血小板薬などの内服を行っていきます。